<ラスベガス学園の今>

ラスベガス学園 顧問   関 市五郎 先生

 補習授業校における家庭学習を考える(つづき)

 

(前回のコラムより) 

私は、本校の教育に関わって丸9年になります。それまでは東京都の公立学校の一教員として37年間勤務し、定年退職後は嘱託職員として5年間、東京都の教育行政(教育庁人事部)に携わってまいりました。この長い教育経験の中で、現在の補習授業校での教育経験は、私にとって貴重な体験であり、改めて教育のもつ意義を考え直すよい機会となっております。特に、補習授業校における「家庭学習」のもつ意義といったことについて、そのもつ意味の大きさを強く感じております。保護者の皆さま方にも、その重要性については十分ご理解いただいていることと思います。毎週土曜日1日のみの学習したことが、その場限りの「点」となって残ってしまっては困るのです。先週学習したことが今週へ、今週学習したことが来週へと一本の「線」となって繋がってゆかなければ学校でのお子さん方の学習成果は期待できません。その「線」となるためのつなぎ役を果たすのが家庭学習であると私は考えます。土曜日の各教室でのお子さん方の学習が実りのあるものになるための鍵をにぎっているのは、その大部分が家庭学習にあると言っても過言ではありません。ここでは、その家庭学習のあり方について、2回に分けて基本的なことから考えてみたいと思います

(以下、前回からのつづき)

 

 ◇ 日本語力をつけるための家庭学習

〇 日本語力のレベルを考える

  現地校の学習を中心にするという方針を立てた場合でも、やはりある程度の日本語力を身につけさせたいと考えておられる家庭も多いかと思います。

  その場合、次のようなレベルが考えられます。

  1.日常会話ができるレベル

  2.漢字を含め、読み書きができるレベル

  3.日本語での学習、高度な思考ができるレベル

  このどのレベルを子どもに求めるのか、よく考えてみて下さい。できれば、頑張って2の読み書きができる力までつけておけば、後になってからでも本を読むことでいろんな考え方や知識を吸収でき、自分で日本語力を伸ばすことができます。


〇 家庭内での会話を日本語で

  子どもたちに、本当に日本語力をつけたいとお考えでしたら、やはり、家庭生活での会話は極力日本語で交わされることを望みます。特に、日本人の親御さんの場合は、継承語としての日本語を大切にしていただきたいです。

  本校に通ったら日本語が身につくなどと簡単に考えないで下さい。むしろ家庭で過ごす時間が多いのですから、この時間を大切に活用していただきたいです。


〇 読む力をつける

  読む力をつけるのに効果的なのは読み聞かせです。日本語が完全でない子どもに一人で本を読ませると、単に文字を追っているだけで日本語の文章として読めていない場合が多く見られます。日本語を身につけた親御さんが読み聞かせをすると、日本語の単語や文章をひと固まりで聞くことができ、正しく習得することができます。

  最初は、歌の歌詞・詩・絵本などから入るとよいと思います。短い文であればあるほど、その短いことばの中に日本語のエッセンスが凝縮されています。復唱させることが有効です。

  また、子どもの年齢や学年にこだわらず、子どもが読める本を与えることです。たとえ、漫画でも、読まないよりはいいのです。そして、ただ与えるだけでなく、その本の内容について話をするなどして、こどもが本当に読めているか、与えた本の難易度が適当なのかを確認し、子どもが今持っている「読む力」を正しく把握しておきたいです。

 

〇 書く力をつける

  できれば毎日、簡単な日記を日本語で書くことをお勧めします。私たち大人でさえも、日本語で文章を書くことがだんだん大変になってきているだけに、子どもたちにとっても文章を書くことは容易なことではありません。

  日本の祖父母や親戚などに日本語でE-mailを送ったり、苦にならなければ手紙を書くのもいいでしょう。こうして日常的に日本語の文章を使うことが、何より日本語力をつけるために役立ちます。



◇ 国語、算数(数学)の家庭学習

<国語>

 

〇 教科書の音読

予習として教科書を何度も繰り返し音読することをお勧めします。海外で育つ子どもたちの言語環境は、そこにポツンと存在する日本語という孤島にたとえられます。このマイナス面を補うことのできるのが音読です。親御さん、とりわけお母さんの日本語教師としての存在は大きいと思います。お子さん方が音読するのを側で聞いてあげて下さい。

   

< 音読のねらいの基本的な条件 >

1.しっかりした声(大きな声)で読む

2.正しい発音で読む

3.ゆっくりした調子で読む

4.つっかえずに、すらすらと読む

 

〇 漢字の学習

  補習授業校の限られた少ない授業時数の中で漢字学習に当てられる時間は、そう多くはありません。むしろ、学校で一括購入したドリル帳や練習帳を使っての宿題として活用する場合が多いです。この宿題を単に課せられた義務として学習するのではなく、日本語習得の一環として子どもたちが目指す日本語力補強策という積極的な考えで取り組む姿勢をもっていただきたいです。

  漢字学習は、読める書けるだけでなく、使えることが大切です。そのためには、漢字のもつ意味がきちんと理解できていなければなりません。ドリル帳にも、そうした活用欄が設けられていますが、その漢字を活用した短文をできるだけたくさん書く練習をしてみることです。

  子どもたちの作文の中で、漢字の意味が十分理解されていないための誤った表記をときどき目にします。例えば、「運動会で白組が赤組に「逆点」して勝ちました」という表記をした子がいましたが、この子は点数が「ひっくりかえった」のでこのように理解したのだと思います。正しくは「逆転」で、得点が反対の方向へ転じてしまったことなのです。


〇 作文が書けないときに

  作文を書くときに、「書くことがない」という子どもがいますが、特別なできごとについて書く必要はないのです。自由に書けと言われて困ってしまう子どもには、たとえば親がタイトルや書き出しの1行だけ与えて、きっかけをつくってやると、それを手がかりに書きやすくなります。

  書く前に親子で話をするのも一つの方法です。例えば、「私がやってみたいこと」というテーマだったとします。まず、「一日お休みがあったら」と具体的なタイトルに変えて、「明日お休みだとしたら何をしたい?」などと聞いてみることです。ここでいろいろと出てきたらしめたものです。

  とにかく子どもに話をさせてみることです。話すことで、子どもは頭の中にストーリーを展開させることができます。あとは、「じゃあ、それを書いてみようよ」と励ましてやることです。


<算数(数学)>


〇 自分で考える力をつける

  算数・数学は、公式や法則を覚えて解き方の型をいくつか知っていればある程度までは問題をこなすことができますし、知識はとても大切です。

  計算問題は、ドリル帳を活用して数多くの問題をこなすことによって力がついてきます。学校では、時間が十分とれないために宿題として家庭学習にまわす場合が多いかと思います。


〇 文章題の打開策

  本校のみならず補習授業校に学ぶ子どもたちにとって、算数・数学の文章題は苦手ものの一つです。日本語で表記された文章の意味が十分読み取れないために、「何を問われているのか」が理解できないためです。

  解決策は、読解力をつけることですが、しかし、長い文章でも、何回か読み直してみると問われているポイントが明確になってきます。その中心文章から自分なりに考えた立式を基に計算します。この場合、問われている単位なども見落としをしないように気をつけることが大切です。

  ともすると、子どもたちは取り組む前から文章題になると半分諦めてしまう傾向が見受けられます。粘り強く立ち向かってほしいものです。

 

  これまで、2回にわたって家庭学習の基本的なことについて述べてまいりましたが、私は、補習授業校の「補習」は、家庭学習を補うという意味に捉えています。家庭学習あっての補習授業校です。学校と家庭が共に手を携え合って、子どもたちのよりよい成長・発達のために努力してまいりましょう。

                               (文責 関